2人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
真っ黒で巨大な影が幾重にも積まれ、びりりっと無惨にも洋服の破れる音がやけに耳に残った。
荒い呼吸と重たい身体は、それだけで私を萎縮させる。
ーーーーもう終わりだわ。
そう、諦めた時だった。
彼が私の前に現れたのだ。
力強い腕力で私にのしかかっていた獣たちを薙ぎ倒すと、絶望していた私の身体を最も容易く抱き上げた。
琥珀色の瞳が怪しく煌めき、深い蒼に染まる長髪が夜空に舞った。
悪夢が終わらないままに、私は彼に連れられて夜の街を逃げる。
どこまでもどこまでも、男たちの影は私たちを追いかけてきた。
だから、鳥籠に入ったのだ。
それがどれほど愚かな行為であったのか、今の私ならよく分かる。
鳥籠は私を守ってくれるシェルターであり、同時に私を閉じ込める牢獄でもあった。
琥珀色の瞳が私を捉えて離さない。
逃げる術は、既に無かったーーーー。
最初のコメントを投稿しよう!