隣家の時計で暮らしてみたら

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「あっ」突然、目が覚めた。 隣からはドアの開く音もエンジン音も何もして来ない。 見れば車も全部、駐車してあるじゃないか。 一安心した。寝過ごしたかと思った。 しかし、俺の携帯電話がけたたましい音をたてて鳴ったので、びっくりして飛び起きた。 液晶画面を見ると後輩の中村の名前が表示されていた。 ん? 一気に嫌な予感がして変な汗が出て来るのがわかった。 「先輩、一体今何時だと思ってるんですか?!大事な商談の時間を忘れたんですか?もう10時ですよ。家の前まで来ていますから、早く出てきてください」 「えーー、10時?!終わった!もう完全に終わった!」 商談は遅刻した事によって流れてしまい、会社に大損害を与えてしまった。 俺は緊急事態宣言が出て、隣の家族全員がリモートワークに切り替わったのを知らなかったのだ。 言ってくれよ! だが、隣の家には何の罪もないのは、わかっている。 ただ、言いたいだけだ。 もう、奥さんが迎えに行ったり、娘や息子が出勤することも無くなった。 これからは、俺は自分で何から何まで時計を見ながら生活しなければならないのか?! いいや、その必要は無くなった。 もう二度と会社に来なくていいと連絡が来たのだ。 どうやら、クビになってしまったようだ。 ざーんねん! よしわかった! 今度は時計のない山奥のリゾートホテルに就職しよう。 だって俺は時計を持っていないんだからさ。
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