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「アンク!お風呂沸いてるから入って来てね」
にっこり微笑まれて、俺はフンッとそっぽを向く。
風呂場に入って綺麗に並べられたタオルや着替えを見てあいつの笑顔を思い出した。
家事を全部1人でやってこうやって帰宅後もすぐにくつろげるように準備されている。
それなのに俺は「ありがとう」も言えない。
ムッとしたり、舌打ちしたり、鼻を鳴らしたり、無視したり……。
本当に嫌になる。感謝も言えず横柄な態度しか取れないなんて。
ザブッと頭からお湯をかぶって目の前の鏡を眺めた。
どう見たって睨みつけている目。
あいつみたいに……。
両手を口の端に置いてグイッと上げてみる。口角を上げたところで怖いのは変わらなかった。
この世界では多くのやつが家に戻って眠るだけの生活をしている。人間と共に大体腹も満たされるし、さっぱりもするからだ。
だけど、俺とマイルは風呂に入り、飯を食う。
俺がそれを楽しみにいているのをなぜかあいつは知っているからだ。
いつもイライラばかりしている俺のこと……あいつは鬱陶しくならないのだろうか?
面倒になって投げ出したり、喚くあいつの姿が想像できない。
いつも微笑んで穏やかなマイルしか俺は知らないから。
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