不適応の肯定

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 白い肌の透明感のある女優。  よりも、もう少し透明。 それが僕。僕は少し透けている人間。僕の透明度はちょうどレースのカーテンくらい。 「あれ?あいつどこ行った?」 それが小学校の同級生たちが僕をいじる時のお決まりのフレーズだった。当時、僕はそれをいじめだと思い少し悔しい思いもしたけれど、今になって思えば同級生たちはそうやって笑い者にする事で僕を受け入れてくれていたのだった。  だが、時は流れ僕が大人になると、周りは僕に気を使うようになった。 「凄い透明感。テレビとか出れば有名になれるんじゃないの?」 そんな事を言われても僕は嬉しくとも何ともない。そもそも、大人になるにつれて僕の透明度はレースのカーテンから薄めのレジ袋くらいまでレベルアップしてしまったので、カメラにちゃんと映れる確証もなかった。ただの洋服が浮かんでいる映像になってしまうかもしれない。  それにここまで来ると不都合も多い。世の中には好奇心が理性を上回ってしまう人がそれなりにいて、電車に乗れば僕の鼻先まで顔を近づけて来る人の多い事、多い事。どうやら、一度、違和感を覚えると、それを解消せずには済まないらしい。  そうなると、やはり笑い者にされているくらいが丁度よかったのだ。子供は世の中を知らない分、違和感を違和感としてありのまま受け入れてくれる。  どうやら、大人になった僕は普通の人間ではいられないらしく、僕は社会に適応できていない。
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