魔法使いになりそこなったお話

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これが初めてではないらしいが、覚えていないのだから実質初めての交わり。なのに身体の限界を超えてまでなされる行為についていけず、最後は気を失うように眠りについたのだった。 目を覚まして初めて自分が眠っていたことに気づく。 けれど覚めきらない頭は自分の置かれている状況が上手く理解出来ない。でもここはとても心地よく、安心出来る。 そうしてしばらく心地よい香りと温かさの中で微睡んでいると、ようやく覚めてきた頭がここが吉沢くんの腕の中だと理解する。僕は抱き枕よろしく吉沢くんに抱き込まれて眠っていた。 ベッドに連れてきてくれたのか。 僕達はリビングのラグの上にいたはずなのに、今はちゃんとベッドの中にいる。身体も綺麗に清められているところを見ると、全て吉沢くんがやってくれたらしい。 タオルの場所とか分かったかな? そう思いながら朝食を作ろうと彼を起こさずに腕の中から抜け出してベッドを降りた瞬間、足から崩れ落ちてしまった。足の感覚がない。それに腰も・・・。 無様に裸のまま寝室の床にへばりついてしまい、何とか起き上がろうと手をつくも、その手もふるふる震えて上手く力が入らない。 そんな自分の身体に焦っていると、いつの間に起きたのか吉沢くんに軽々と抱き起こされてベッドに戻される。 「あり・・・・・・」 がとう、と言おうとした僕の言葉に、吉沢くんの声が被る。 「すみませんっ」 僕をベッドの中に戻した吉沢くんは床に膝をついてベッドに手を置き、その頭を布団に擦り付けた。 朝イチ起き抜けから土下座のように謝られて、僕はぽかんと口を閉めるのも忘れて吉沢くんを見てしまった。 「僕の下で乱れる浜崎さんがあまりにもかわいくて、自分を抑えることができませんでしたっ」 そのままベッドに頭をつけたまま顔を上げない吉沢くんを見ながら、僕はようやく理解する。 そうか、僕はいわゆる『抱き潰された』んだね。 足腰が立たないのはやりすぎ(・・・・)たからだ・・・。 今まで全く誰かとベッドを共にしたことがなかったので、自分の身に何が起こっているのか分からなかったけど、そういうことか。 と妙に納得していると、さらに弱々しい声が聞こえる。 「僕を嫌いにならないでください・・・」 シーツをぎゅっと握って小さくなっている吉沢くんがなんだかすごくかわいい。 怒られた時の玲央みたいだ。 かわいすぎて胸がきゅんとする。 僕は吉沢くんの髪に手を伸ばしてなでなでする。 「嫌いになるわけないでしょ?」 そう言って思い出した。昨日一度彼を拒んだんだった。拒んだから怒った吉沢くんにラグに押し倒されてしまって・・・。 やりすぎちゃった自覚はあるんだね。
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