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エピソード3 プールサイドの異変
アキマサ達クランメンバーはアナザーリアリティ内の数あるエリアの一つ、ウォーターアトラクションエリアのプールへとやって来た。
入り口の大きなアーチ形のゲートにはアルファベットで【ブルーラグーン】の文字が入った南国風の看板が掛かっている。
敷地内は既に他の先客たちで賑わっていた。
「見て!! 流れるプールにウォータースライダーよ!! 楽しそう!!」
大規模なプール施設を目の当たりにして目を爛々と輝かせるキャシー。
「エラいはしゃぎ様だなキャシー、プールに来るのは初めてか?」
「うん!!」
アキマサの質問に満面の笑顔を向ける。
「この屋外プールは夏季限定だからなぁ、ギリギリだったよ」
そもそもネット空間に屋外や屋内、季節など関係ないのだが、マンネリ化防止と季節感を出すために敢えてそういう事をアナザーリアリティ運営側は行っていた。
「最初はウォータースライダーに行くーーー!!」
「よっしゃ!! 一緒に行こうぜ!!」
ケンジがキャシーに付き添いウォータースライダーへと昇るための長い階段を目指して走っていく。
「ケンジってキャシーの言う事にはすぐに賛同するよな」
「あら、知らないのアキマサ? ケンジってキャシーの事好きなのよ?」
「えっ!? 犯罪じゃん!!」
「バカね、キャシーはアバターの見た目が幼いだけで中身は大人の女性に決まってるでしょう」
「でもよ、お互いの現実の姿を知らないんだぜ、アバターの見た目を好きになったんじゃないのか?」
「うっ、そう言われればそうね……ケンジってロリコン?」
アキマサの言った事でシンディのケンジを見る目が変わってしまった。
「まあいいわ、アキマサ!! あっちの競技用50メートルプールで水泳勝負よ!!」
ビシィ!! とシンディがアキマサを指さす。
「だからやんねぇっての」
「もう、ノリが悪いわね」
一方、ミカはプールサイドのビーチパラソルの元、リクライニングチェアに寝そべっていた。
「ウフフ、私はのんびりとここで過ごすとするわ」
以上に布面積の少ないハイレグ水着を惜しげもなく見せつける。
グラマラスなプロポーションとの相乗効果でこれはもはや犯罪級の破壊力だ。
傍を通り過ぎる男たちの目は釘付けだ。
「ミカさん、飲み物を買ってきました!!」
コウが両手にグラスに入ってトロピカルドリンクを持参しミカの元へ現れた。
「あらコウ君、ありがとうね」
「いえいえ」
ミカはコウからグラスを受け取る。
そしてミカの隣のチェアに腰かけた。
「コウ君はみんなと遊ばないの?」
ストローに口を付けドリンクを吸い上げる。
「プールも悪くないですが僕はミカさんの側に居たいなぁ、なんて思って」
「あら、もしかして私を口説こうって思ってる?」
「そう思ってくれるなら嬉しいのですが」
コウのイケメンスマイルが炸裂する。
大抵の女の子はこれでイチコロ……なのだがミカには効いていない様だ。
「ねぇ、コウ君は恋愛対象に何を求めるの? 容姿? 性格?」
「……見た目ですね」
ミカの質問に一瞬戸惑うコウだったがすぐに返答する。
「まあ、はっきり言うのね、じゃあコウ君は私の見た目が良いから私にアプローチしているのね?」
「そういう事ですね、僕の持論はまずは見た目なんです、相手を見る事は容姿を見る事、好みの見た目の人にしか興味は持てませんからね」
「成程ね、だからあなたのアバターはそんなに美しい容姿をしているのね」
「否定はしません、相手も僕の容姿を気に入ってくれたのなら最初の掴みはOKですから」
「じゃあ容姿を気に入ったとして、もしその子の性格が最低最悪だったらどうするの?」
「程度によりますね、僕の許容範囲なら多少性格が悪くとも目を瞑りますよ」
「ウフフッ、面白いのねあなた、こうしてあけすけに話をしたのは初めてだけどあなた気に入ったわ」
「じゃあ僕と付き合ってくださいよ」
コウはミカの方へと身体を近づけ顔を寄せようとする。
しかしミカの手でコウの顔は押し留められてしまった。
「ダーーーメ、まだ早いわ……もし時が来て私好みに君がなっていた時はこっちからお願いするわ」
「本当ですか!? 今の言葉忘れませんよ!?」
「ウフフッ、興奮しちゃって可愛いのね、せいぜい自分を磨いてらっしゃい」
「ヤフーーー!!」
派手な水しぶきを上げてスライダーの終点から飛び出すキャシーとケンジ。
「もう一回行こう!!」
「おう!!」
テンションの高い二人、彼らの足元の水の中に影が見える。
「うん? 何だろうこれ?」
キャシーが首を傾げているとケンジが彼女に寄ってきた。
「どうしたのキャシー? 何かあった?」
「今足元に何かいた気がするの……」
「魚かな? でもここのプールでそんな話聞いた事が無いな」
「あっ、ほらまた来た!!」
キャシーが指さした先には先ほどより遥かに大きい影があった。
そして次の瞬間、その影からあるものが飛び出た。
鮫だ、それも凶暴でその名を馳せるホオジロザメだ。
しかも物凄く大きい。
「きゃあああああああっ!!」
キャシーが悲鳴を張り上げケンジに抱き付く。
「何かのアトラクションだろうか? しかし大迫力だなぁ……」
ぼーーーっとそのホオジロザメを見上げる
「何だアレは!?」
「何かの仕掛け?」
「きゃあ、こわ~~~い」
悲鳴を聞いて周りの客の視線が一斉にホオジロザメに集中する。
皆何が起こっているか分からず、ケンジ同様に何かの仕掛けと見る者や、怖くなって顔を覆うものなどリアクションは様々だ。
「おい、あれはヤバくないか? キャシーとケンジは大丈夫だろうか?」
「あんなのただコケ脅しでしょう? 何も危険な事は無いわよ」
「そうだろうか……何だかとても嫌な予感がする」
アキマサが心配する中、ホオジロザメが動き出しケンジに襲い掛かった。
「おっと!!」
CGと分かっていても条件反射で身体を避けるケンジ。
しかし鮫の刃が右肩を掠ってしまった。
鮫はそのまま水の中へと潜っていく。
「あれ? いてーーーーーーっ!!」
ケンジが右肩を押さえ水の中で蹲った。
彼の周りの水がじわじわと赤く染まっていく。
「きゃああああああっ!!」
それを見てただ事ではないと周りの客も悟り、悲鳴を上げて逃げ惑う。
「ケンジ!!」
アキマサは慌ててプールに入りケンジとキャシーの元へと急ぐ。
「ちょっと!! 危ないわよアキマサ!!」
「そんなこと言ってられるか!! 二人がピンチなんだぞ!!」
ケンジは相変わらず水に沈んだまま、キャシーは恐怖によりその場から動けなくなっている。
「何なんだ!! 一体何が起きている!?」
二人の周りを鮫の影が囲うように周回している。
このままでは二人はが危ない。
「待ってろケンジ!! キャシー!! 今行くぞ!!」
アキマサは恐怖心よりも仲間を思う心が上回りざぶざぶと水を掻き分け足を進めていく。
果たしてアキマサはケンジとキャシーを救う事が出来るのだろうか。
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