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《…そうだ、俺を待っていたのは…
俺の父さんだけど…。
俺を育てている父さん じゃない
俺を育てていた父さん なんだ。
今も親子だし、これからも親子だ。
だけど、あの家に…4歳でソファで飛び跳ねる俺も、
自分の部屋に籠もり漫画を読んでいた思春期の俺も、いない。
だからそんな俺を育てていた父さんも居ない。
今居るのは、紛れもなく時間が経過して、それだけ歳を重ね、母と二人で生活をして、たまに息子から連絡のくる父。
だから俺の記憶の中に居る父さんとは違う父さんなんだ。》
俺は自分の中に感じた違和感の正体を理解した。
そうして信号待ちの時に振り返った。
眠る二人の息子の顔を見た。
きっとこの子と過ごす時間もそれに等しい。
孫と会わせるのは孫が日々変化するからだ。
それと同じ様に親の背中も日々変化していく。
だから何度でも焼き付けよう。
今度も、俺を待っているのは俺の知っている父さんの姿じゃないから。
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