20.北星秀・写真集 『エゴイスト』

6/7
前へ
/245ページ
次へ
*帰ろうと思ってくれなかったの? 暖房の道具もテントもあった。帰ろうと思っていたのなら、どこで帰らないと思うようになったの? ハコと父とダラシーノのこと……どこでサヨナラしたの…… ■ 3/10 5:55 吹雪 ■ 3/10 5:56 吹雪 ■ 3/10 5:57 吹雪 ■ 3/10 5:58(3/10当日 日の出時刻) 吹雪 ■ 3/10 5:59 吹雪 ■ 3/10 6:00 小雪がちらつく空になる。視界が開ける だが向こうはまだ吹雪 ■ 3/10 6:10 ■ 3/10 6:10 ■ 3/10 6:11 ■ 3/10 6:12 ■ 3/10 6:14 ■ 3/10 6:15 ■ 3/10 6:17 吹雪が開ける。駒ヶ岳の山裾に日の光が差し始める 駒ヶ岳と湖面が薄紫に染まり、湖面に星が映りそうな雪開け 紺碧、紫苑、薄紅が混じる夜空に、雪細工の森林 去って行く吹雪がのこした、ちらちらと落ちていく粉雪―― ――刻々と夜明けの色が移りゆく連写が遺されている―― ■ 3/10 6:30 湖面に駒ヶ岳が映り、空が白み始める。 ―― ここで写真データ 途切れる ―― *ハコ――、死ぬほどほしいものがあることは、しあわせなことなんだよ。僕にはそれが写真だったよ。写真がなくちゃ仕事もここまでやれなかった。 *僕は、大沼で見られる景色がぜーんぶほしいんだ。 ほんっとに美しいんだよ。宝石を手に入れたと言えばわかってくれる? 北星さん、宝石を手に入れたんだね。 そう思っている。 シャッターを押したその瞬間の至福 エゴイストの至福がそこにある。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

471人が本棚に入れています
本棚に追加