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コートに戻ったメンバーの目つきは真剣そのもので、必死にバレーボールを追いかけていた。
その後、点差は少しずつ縮まっていって、24対24のデュースにもつれ込んだ。
風は我が校に吹いていると感じた僕はコート内のメンバーに、
「頑張れ」
と大声で声援を送った。
そして25対25のデュースとなったが、その後は我が校が2点を連取して25対27で勝つことができた。
僕はメンバー皆の笑顔を見て僕自身も嬉しくて、目から涙が溢れて止まらなかった。
試合が終わって僕は試合会場から直接、阿久津監督が入院している病院に向かった。
病院に到着して、僕は病室の前でドアをノックして、
「失礼します。」
と言って病室内に入った。
するとそこに、阿久津監督の奥様と娘さんがいて、ベットの上には白い布で顔が覆われた阿久津監督が静かに安置されていた。
「実は先ほど主人が息を引き取りました。
主人はテレビでバレーボールの試合を見ていました。
最終セットで大差になっている時に『和倉君、時には叱ることも必要だよ!』と声を出していたようです。」
奥様からの言葉に、僕は愕然とした。
やはり試合中に僕に話しかけてきたのは、阿久津監督に違いないと確信した。
「そうだったのですか…
僕は監督に一刻も早く優勝の報告をしたいと思ってここに来ました。」
僕は阿久津監督にお礼を言いたいと思って奥様にお願いした。
「お顔を拝見してもいいですか?」
「はい、かまいませんよ!」
奥様は快く承諾してくれた。
僕はそっと白い布を取って、阿久津監督の顔を見つめた。
その顔は、なんとなく使命を終えた満足感のある顔に見えた。
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