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様子を伺う
はじめは、情報として認識している程度だった。
しかし連日の報道と新型ウィルスの情報が耳に入れば入るほど、恐怖が押し寄せてきた。
マスクをして、手洗いうがいをしていても感染するかもしれない強力なウィルス。
癌で死んでしまうことは何とか受け止めていたが、こんなウィルスで死んでしまうことは想定外だ。
私はまだ何もやりたいことをしていない。
しかしこの状況ではとてもじゃないが、やりたいことリストを実行に移す選択肢にはならなかった。
その内、マスクが品薄というニュースが報じられた。
私は血の気がひいた。
普段から不織布マスクが手放せない身体なのだ。
ストックを確認すると1箱だけだった。
品薄マスクを求めて、お店に行くだけでマスクを消費するのは元も子もない。
極力外出を控えてマスクが流通するのを待つしかない。
買い物はすべて通販やネットスーパーにお願いするとして、月数回の通院だけなら何とかなるかもしれない。
それから私のひきこもり生活がはじまった。
マスクが入手できようが、結局はこの新型ウィルスがおさまるまで、やりたいことはできないと割り切っていたので、ひきこもり自体は苦ではなかった。
元々、アクティブな性格でもなかったのが功を奏していた。
感染者数はどんどん増えて行き、国内に緊急事態宣言が発令され、感染した有名人の死亡が報じられた。
衝撃と共に、新型ウィルスでの死が現実のものとして迫って来た。
その間も、私の身体状況は投与し続けている抗がん剤や癌細胞によって徐々に弱りはじめていた。
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