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光明
緊急事態宣言が明けたある日、私の癌を知る友人から、会おうと連絡があった。
私は断った。
緊急事態宣言が明けたとはいえ、感染者数は多いままであったし、友人と会いたいという一時の願望を満たしたことによって、万が一私がウィルスに感染してしまい最悪の状況になった際の友人の後悔を考えたら、会えなかった。
また、逆に私が友人に感染させてしまい、友人本人やその家族にもしものことがあった場合を想像しても、その後の関係を思うと、会えなかった。
友人は、今会えないと次いつ会えるかもわからないからと言ってくれたが、抗がん剤をしているから会えないと付け加えた。
「どうして抗がん剤をしていたら会えないの?」
友人は不満そうに言った。
好意を無にされたように感じさせてしまったようだった。
大きな病気をしたことのない友人からしてみたら、抗がん剤と言っただけでは想像力が働かないのも仕方のないことだった。
通院にだけ外出する生活を淡々と続けていたある日、ワクチンができたというニュースが報じられた。
待ちに待ったワクチンだった。
ワクチン接種が進みさえしたら、ついに私のやりたいことリストができる。
動ける間に、やりたいことリストができる可能性に私は歓喜した。
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