26人が本棚に入れています
本棚に追加
『朱里ちゃん? どうした?』
目の前にいるのは佐恵子なのに、輝明の声が聞こえて来る。
運命は変えられない。
もう変えることはできない。
気が付くとあたしは手にカッターナイフを持っていた。
黒い糸が絡み付く足首を見下ろす。
「ちょっと朱里?」
「来ないで!!」
佐恵子へ向けて怒鳴っているのに、輝明に向けて怒鳴っているような気がした。
それもこれも、この糸のせいだ。
でも……。
糸が繋がれば、また切ればいい。
何度も何度も切ればいい。
繋がった箇所を、なくせばいい。
そうすればいつか最後には……。
あたしはカッターの刃を自分の足首に深く食い込ませたのだった。
END
最初のコメントを投稿しよう!