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「ねぇ、本当に大丈夫? 保健室、行く?」
そう言われて、あたしは鼻をすすりあげて「行く」と、答えたのだった。
☆☆☆
5時間目が始まる前の保健室には、誰の姿もなかった。
先生もいないが、鍵が開けっぱなしになっていたからすぐに戻ってくるのだろう。
「とりあえずここに座って」
佐恵子がそう言って、あたしに丸椅子を差し出してくれた。
そこに座ると安堵感が襲って来て、余計に涙があふれ出して来る。
あたしの泣きっぷりを見て佐恵子もなにか感づいたようで、ずっとあたしの背中をさすってくれている。
「大丈夫?」
5分間ほど思いっきり泣いて顔を上げると、優しくほほ笑んだ佐恵子がいた。
「……別れた」
鼻声でそう言うと、佐恵子の表情が痛そうに歪む。
「そっか」
それだけ言って、またあたしの背中をさすった。
「好きな人ができたんだって」
「えぇ? カオル君、そんな風には見えなかったのにね……」
さっきまで彼氏だった人の名前を出されて、また胸がチクリと痛んだ。
「あたしも……彼女なのに……なにも気が付かなかった」
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