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そう言うと、また涙があふれた。
あたしは彼女なのに、カオルのことをなにも見ていなかったのかもしれない。
少しも変化に気が付かずに今日まで来てしまった。
カオルの変化に気が付いていれば、こんな日は来なかったかもしれないのに。
そう思うと悔しくてたまらない。
「でもさ、新しい出会いのチャンスだよ」
佐恵子が、今度はあたしの手を握りしめてそう言って来た。
「新しい出会い……?」
相変わらずの鼻声でそう聞き返す。
「そうだよ! カオル君は運命の相手じゃなかっただけで、絶対にどこかにいるんだから!」
「運命の人が?」
「そうだよ!」
佐恵子はそう言いながら目を輝かせる。
あたしを慰めるために一生懸命になってくれているのがわかった。
でも、別れたばっかりで新しい出会いなんて考えられないし、運命の出会いなんて来ないんじゃないかと思えてしまう。
「そんなに沈んだ顔しないでよ。今日は沢山泣いても、明日になったらまた可愛い朱里に戻らないと! じゃないと運命の王子様に見つけてもらえないよ?」
『運命の王子様』
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