切る

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高原がそばにいなくても、しばらくはその話題が付いて回りそうだ。 あたしは自分の席につき、大きくため息をはいたのだった。 ☆☆☆ 「今日は来ないね」 昼休憩になり、佐恵子がそう言って来た。 「本当! すごく快適!」 あたしはニコニコと笑顔でそう答えて、お弁当の卵焼きを口に運んだ。 今日は高原が1度も1組にやってきていないのだ。 それだけで随分と快適に過ごす事ができている。 「高原君、なにかあったんじゃない?」 「ふぅん?」 あたしは佐恵子の言葉に感心を示す事なく、お弁当を食べ勧める。 「この前食堂で見たイジメとかさ……」 「気になるなら、4組に行ってみれば?」 あたしがそう言うと、佐恵子は驚いたように目を丸くした。 「朱里は気にならないの?」 「全然?」 どうしてあたしが高原のことを気にしなきゃいけないのか、わからない。 関わらないでいいのなら、そっちの方がよほどうれしかった。 「あ、でも……」 あたしは赤い糸を見て思わずそう呟いていた。 「やっぱり気になる?」
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