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大江山の戦い
今から千年と少し前、その頃の平安の都には疫病が蔓延し、人々は疲れ果て心は荒んでいた。
落雷により寺が焼け落ちると、いよいよ都の外には魑魅魍魎の類が出没する、という噂話が現実のものとなり夜毎に若者や姫君が神隠しに遭っていた。
都の北西、大江山に鬼の根城あり。
陰陽師安倍晴明の占いにより、鬼の首領は酒呑童子、仲間の茨木童子と共に悪逆の限りを尽くし、人から鬼に墜ちた者の仕業と判った。
帝の命を請けた源頼光は配下の四天王を率い、大江山の洞窟内に建てられた神殿で鬼の軍勢に立ち向かった。
「殿っ!今です!」
「良くやった金時!」
鬼の首領、酒呑童子の両腕は四天王一の腕力を持つ坂田金時に抑えられた。
金時と酒呑、がっぷり四つで睨み合いの火花散るその時、源頼光の持つ名刀安綱が弧を描く。
「酒呑〜っ!!」
「行かせるかよっ!」
助けに入ろうとする茨木童子だが四天王筆頭渡辺綱が行く手を阻む、渡辺の持つ刀は名刀髭切、触れれば鬼とて只では済まない。
茨木童子は綱を躱し駆寄ろうとしたが、毒酒を呑んだ体が言う事をきかない、片膝をついた所を名刀髭切が襲いかかる。
「ぐわっ!」
八幡大菩薩の加護を受け、鍛えられし名刀髭切は、茨木童子の右腕をいとも容易く切り落とした、片腕を失った茨木童子はもんどりうって倒れたが手下の鬼達は一騎当千の四天王、卜部季武、碓井貞光の武力に阻まれ近付く事すらできないでいた。
「おのれ頼光〜っ!」
「獲った!」
頼光は身動きの出来ない酒呑童子の首を跳ねた、その身体は血しぶきを上げながらがくりと崩れ落ちる。
親友でもあり兄貴と慕う酒呑童子、源頼光の奸計にかかり命を落とすとは!
酒呑童子が倒れる様を渡辺綱越しに見ていた茨木童子だが、次に討たれるのは明白だった。
「殿っ?!」
しかし渡辺は身動きの取れない茨木童子に止めを刺すことが出来なかった、酒呑童子の首が最後の妖力を振り絞り、頼光へ襲いかかったのだ、渡辺綱、坂田金時両名は飛び回る首を打落とそうとするが、酒呑の首はひらりとかわし頼光へと迫る、あわやと言うところまで迫ったが、兜に阻まれついに酒呑童子は力尽きた。
その隙に茨木童子は辛くも逃げおおせた…。
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