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俺の2つ上の姉が腐女子で、よくマンガを見せられたり「あんた何かBLエピないの?」だなんてお前それが弟にいう質問か!?みたいなのを堂々と投げかけてくるありえない生き物なので、その系統については深く知識がある。
まさか自分がこんな事になるとは。
はあ、とまたため息をつく。俺と同じく新入生であろう生徒達が、ぞろぞろと正門に入っていく。
─────よし、俺もそろそろ覚悟を決めて…
俺が勇気の第1歩を踏み出した時、ポンと肩を叩かれる。思わず肩を跳ねさせて振り向くと、俺と同じくらいの茶髪の美少年が立っていた。
なんだ!?いきなりBLフラグなのか!?どうやって回避すればいいんだ!?
内心焦りつつもまじまじとソイツを見つめると、俺より背は高いがどこか大人しそうな、綺麗な茶髪をサラサラとなびかせて、制服をキッチリと着こなしている。
いかにも優しそうだ。
相手も俺の顔を見てか、それとも俺が挙動不審で急に振り向いたせいなのか、少し驚いたような顔をしている。
少しおろおろとしたソイツの手には、見覚えのあるハンカチ。
「あ、それ俺の…」
そう言うと、相手は少し微笑み、落としたよ、とハンカチを差し出した。不思議と落ち着くような澄んだ声だ。
どうやら正門で百面相をする前、正門のチェックを通り抜けるために鞄の中から学生証を出した時に落としていたようだ。
「ごめん、ありがとう。いつの間にか落としてたみたいだな」
思わずほっとする。そうだよな、突然初対面の相手にキスされたり告白されたり、そんなの漫画の中だけだよな。
しかも俺は思い出した。姉の持っていた主人公総受けの学園BLマンガでは、1番最初に出会う優しそうな奴は主人公のいい友達になるポジションだったはずだ!
あいにく友達もまだいないしここで声をかけない手はないような気がしてくる。
いくら王道展開になりたくないとはいっても、高校3年間同性の友達がいないなんて寂しすぎる。そんなのは嫌だ。
それじゃあと行こうとするソイツの袖を引くと、ソイツはまた驚いたように振り返る。
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