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【桐渓星視点】
…驚いた。
たまたま、ハンカチを落とすのが見えたから、困るだろうと声をかけてすぐ立ち去るつもりだったのに、まさか行動を共にしようといわれるなんて。
しかも、あの有名な鷹宮財閥の息子…?
「鷹宮くん、よくお父さん男子校に入れてくれたね」
鷹宮くんはとてもなんというか…男子校にいたら危ないような外見をしている。色が白くて、華奢で、瞳が大きくて、少し色素が薄い。睫毛が長くて上から見ると伏せ目になったり上目遣いになったりと、なんだか…。
俺の言葉の意味を察したのか、鷹宮くんはああ、というような顔をした。
「玲葉でいいよ。俺も星ってよぶから。うーん、まぁ俺もそう思うんだけどさ。恥ずかしい話、第一志望校に落ちちゃって。仕方なくって言ったらすげー失礼だけど…」
「お父さんは入学させてくれなかったんだ?」
「うん、俺の父親は自分のことは自分で責任取れってスタンスだから。落ちたなら自分のせいって感じで。でもそれでよかったと思ってるよ」
そう言われて少し納得した。鷹宮財閥の息子が、なぜこんなところ───こんな所とはいっても、白爾もかなり立派な金持ちの集まる高校ではあるけれど───にいるのか分かった。
玲葉の第一志望校はきっとここら辺でトップと言えば碧宰だろう。
白爾と碧宰の違いは単純に言えば男子校か共学か、後偏差値だ。どちらも名門で金持ちの集う高校である事には変わりない。
というよりも、玲葉は自分の容姿がどんなものかしっかりと自覚があるのか。面白いな。
「あまり怖がらせたくないけれど、気を付けてね?男子校っていい噂聞かないから…玲葉、きっとすごくモテちゃうよ」
「うわぁ、気持ち悪いこというなよ星。俺は王道にはならないぞ」
…王道?
「それに、そういったら星だってそうなんじゃないか?…ああ、でも星は受けっていうより王子様っぽいな…」
…受け?
よくわからない言葉が玲葉の口から飛び出すのを聞く。
「そうかな…俺、結構大人しいほうだし王子様とはいわれたことはないんだけど」
「ええ?!絶対言われてるって!綺麗な顔してるし!もっと自信もっていいぞ」
そう言われて思わず照れてしまう。
俺たちはそのままたわいない話をしながら体育館に向かった。向かう途中で、何回も通り過ぎる人々が玲葉を見ていた。その視線には気づいていないらしい玲葉は、ニコニコと話している。
やれやれ、こんなあからさまな視線に気付かずに今日出来た友人は大丈夫なのだろうか。
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