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神矢先輩はげんなりと項垂れてしぶしぶ着いてきた。そんな様子を見ていると、俺様でワガママで最悪だと思ってたのになんだか可哀想になってくる。俺が今帰りたいと思っているように、神矢先輩も心の中では泣いているのかも。
お化け屋敷は入口から真っ直ぐ歩き続け、突き当たりを左に曲がるとすぐ見えてきた。おどろおどろしい外見が周りのポップなアトラクションから激しく浮いているので曲がった瞬間に見えた。見たくなかった。しかも、寮長達が集まっているせいで行く先々で親衛隊から黄色い悲鳴が上がって耳が痛い。
近づけば、ご丁寧に「日本一の怖さ」だの、「心臓の弱い方はご注意ください」だの、怖がらせる文面が沢山書いてある。……ああ、胃の中がひっくり返りそう。俺、怖いのもダメだけどビックリ系はもっとダメなんだよ。それが合わさるホラーは俺にとっての天敵なのに。
なんで最近のお化け屋敷はこんなにクオリティが高いんだろう。小物とかこんなに凝らなくてもいいじゃん。
俺がいくら悪態をついても順番はまわってくる。スタッフさんから入口に案内され、怖々と中に入った。さっきまで明るかったのに、中はぽつりぽつりとある室内の殆ど機能していないような薄暗いライトでしか光源を確保出来ない。
パンフレットに書いてあったように中は廃墟のようになっている。ボロボロの椅子や机があちこちに散乱しており、壁にはべったりと血が着いている。演出なんだろうけどひゅうひゅうと足元から冷たい風が吹いてきて足が竦んだ。
「玲葉、怖いの?…怖いなら腕組も」
横から全然怖がっていない、むしろ何故か楽しそうな優希先輩が腕を出してくる。いつもだったら断るけど今の俺にそんな余裕はない。必死に頷いて優希の腕にしがみつく。人とくっついているだけで、多少は怖さが和らいだ。
少し余裕が出来て辺りを見回すと、神矢先輩がカチコチに固まりながら城間先輩の制服の裾を掴んでいた。……神矢先輩の体格や性格でそうしているのがやけに面白くて思わず笑いそうになったが、他人から見たら同じようなことをしていてここで笑うと特大ブーメランでしかないのでやめた。雪先輩が必死に笑いをこらえているのが見える。……この人楽しみすぎじゃないか??
星は本当にホラーが好きみたいで、室内の小物をじっくりながめている。星の事は大好きだし友達だと思っているがこの点に関しては全く理解できない。俺なんてまだ何も起こってないのにもう泣きそうだ。
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