恐怖の親睦会

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そのまま怖々と、何も見ないようにぎゅっと目を瞑り優希先輩の腕にしがみついてそろそろと歩く。唐突にバン!とかガタン!とか音がなる度に俺は心臓バックバクで今にも死にそうだったが、俺の周りに人が沢山居るおかげでなんとか耐えていた。 ここを抜けたら俺、美味しいものが食べたい……。そんな死亡フラグを無意識に立てる。 優希先輩が隣から時々なにか喋ってるけど俺の耳には聞こえておらず、「へぇ」とか「はい」とか魂の抜けた相槌を打ち続けた。 そのとき、手前に「」というおどろおどろしい看板が見え、俺と神矢先輩は目を輝かせた。俺は優希先輩の腕を、神矢先輩は城間先輩の裾をパッと手放し、2人して看板の方に駆け寄る。やっとここから出られる……! ぎいぃ、と俺達の前で床をふむ音がした。 「おあぁっ!?」 神矢先輩の叫び声に前を見ると、先程までいなかったのに、出口の前に女の人がぬっと立っていた。上下とも白の裾の長いワンピースを着ているはずなのに、所々が赤く染まり黒く長い髪を前までだらりと垂らして、その隙間から生気のない瞳とかさついた血色の悪い唇が見えている。出口の前にある青白色の薄暗いライトの下で、ますます青白いその人。出口までは一本道なのにどこから現れたのか分からない。 「〜〜〜っ!!!」 俺は声にならない叫び声をあげると、バッと振り向いて先輩達の方へ逆に駆け出した。駆け出して、その中から1番頼りになると心の底で思っていたであろう城間先輩に前から思い切り抱きつく。 俺に勢いよく抱きつかれた城間先輩は多少ぐらつきながらも、俺を抱きとめてくれた。既に涙目の俺は、必死に女の幽霊を見ないように顔を埋める。 「お、おい。あんなのお化け屋敷の仕掛けのひとつでスタッフだって。ほら、お前があんまり驚いてるからスタッフも心配そうにしてるぞ」 城間先輩がそんな風に宥めてくれたがそれどころじゃない。俺は頑として城間先輩から離れないぞと首を横に振りまくった。 「……はぁ、しょうがねぇな」 そんな声が聞こえたあと、ふわりと体が宙に浮かんだ。 「しっ、城間先輩?!」 「お前が抱きついてちゃ俺が動けねぇよ。そんなに怖いなら外まで運んでやっから、じっとしとけ」 そんなに体格もガッシリしているわけでもない城間先輩が俺を軽々と抱えることにも驚きだったが、子供のように抱き抱えられお化け屋敷の恐怖と抱えられる恥ずかしさを天秤にかけ俺は恐怖に負けた。 少し落ち着いて耳を澄ますと、どうやら固まっているらしい神矢先輩をつついて遊ぶ雪先輩の楽しそうな声が聞こえたし、星や優希先輩が俺に心配そうに声をかけているのも聞こえた。恥ずかしすぎて返事は出来なかったけど……。 少しして突然明るさと外の空気を感じ目を開けると、お化け屋敷の外に出ていた。ホッと胸を撫でおろす。城間先輩が俺を地面に下ろしてくれると一気に恥ずかしさが湧いてきた。 ……う、俺、高校生にもなってお化け屋敷でガチで泣いて先輩に抱きついて外に運ばれるって……かなりかなり恥ずかしいぞ……。
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