恐怖の親睦会

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顔とか耳、首がじんわりと暑くなるのを感じる。 恥ずかしいながらも、俺が城間先輩にお礼をせめて言おうと色々考えていると、城間先輩はそんな俺を少しの間見つめて、ポンと頭を撫でた。そして俺の耳元で「気にすんな」と一言だけ言うとくるりと後ろを向き、固まっている神矢先輩を救出しにかお化け屋敷に戻っていく。 …………か、カッコよすぎないか……!? 俺は女子じゃないけど、女子がこんな対応されたら一瞬で恋に落ちてしまうのでは!?城間先輩ただでさえ見た目が綺麗なのに、中身は男前ってどんだけ罪な男なんだ……。共学にいたら一瞬でモテモテになって告白されまくりの毎日を送れるんだろうな…いや、男子校でも似たような事になってるか。 少女漫画みたいだな、と思いながらぼんやりしていると、星と優希先輩が心配そうにしてやってきた。 「玲葉ごめんね、そんなにホラー苦手って知らなくて……」 距離を縮めたかっただけなのに……と優希先輩が後ろからぎゅっと抱きついてくる。怖すぎて色々聞き流してたけど、まじで俺と仲良くなりたかったのか。聞けば怖がってるとは思ってたけど泣くほどだとは思ってなかったらしい。…そりゃソウデスヨネ。高校生にもなってまさかお化け屋敷で醜態を晒すとは、自分でも思ってなかったもん。 しかも怖がるのは怖がってたけど、怖がるのに夢中で「行きたくない」という主張をするのを忘れきっていた。雪先輩は思いっきり確信犯だったけど、星は気遣いが足りなかったと謝ってくれる。いやいや、星は純粋ににホラーが好きでお化け屋敷に行きたかっただけなんだからと必死に止めたがそれでも星は申し訳なさそうだった。 そうやってあれこれやり取りをしていると、お化け屋敷の中からカチコチに固まった神矢先輩を城間先輩が引っ張り出してきた。雪先輩は未だに楽しそうに笑っている。 神矢先輩はお化け屋敷から出て、外気に触れると、冷凍されていたのが一気に解凍されたようにハッとして辺りを一瞬見回した。 「ふ、ふん!大して怖くなかったな!」 どう見ても嘘とバレバレな強がりを言う先輩に、雪先輩が吹き出した。俺は神矢先輩の気持ちがあまりにもよくわかったのでからかう気はまるで起きず、そっとそばに行き肩に手を置いてわかってますよ、と言わんばかりにと頷いた。 雪先輩も雪先輩で、笑ってはいるけどからかってるのは友達……なのか?とにかく同じ3年の神矢先輩ばかりだし、腹はたつけど言葉に出してからかう人間としない人間の線引きはちゃんとしてるんだな、と妙な所で関心しそうになる。 まさか遊園地で1個目のアトラクションで俺と神矢先輩がこんなにボロボロになるとは想像も出来なかった。とにかく疲れた俺は時間を見て園内のレストランに向かわないかと皆を誘った。 皆も怖がっていた俺に気を使ってくれたのか、誰も反対せずに着いてきてくれることになった。
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