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俺の嫌な予感は、ズバリ当たってしまったらしい。ムッとする寮長達の中で1人、余裕そうな笑顔を浮かべる雪先輩がにこやかに手を挙げた。
「誰かと思えば風紀委員の皆さんじゃないか。遊園地での生徒たちの取り締まりはいいのかい?」
「お生憎、取り締まりの方は順調ですよ寮長サマ」
黒髪をニュアンスパーマにした男子生徒がニコリと胡散臭い笑顔で雪先輩にそう返した。背が高くて、アンニュイな空気を纏うその男子は、真っ黒な瞳の下に泣きぼくろがあった。
「風紀委員が何の用だ?あぁ?!」
神矢先輩がぶっきらぼうにそういうと、「怖い怖い」とその男子はケラケラ笑ってみせる。どうやら本当に仲が悪いらしい、一触即発の雰囲気。
「お前らが取り締まってる今の件、こっちに渡せよ」
隣にいたこれまた背の高い、焦げ茶の髪をアップバングにした少々イカつい男子生徒が苛立つように舌打ちをする。
……今の件?
なんの話しだろう、サッパリ分からない。
俺がきょとんとして話を聞いていると、余裕そうにしていた雪先輩が少し眉をしかめた。綺麗な顔が嫌そうな顔になると迫力が凄まじい。
「…………君たちにデリカシーがないのは知っていたけど——新入生の親睦会で、1年生がこの場にいるっていうのに……いただけないね」
またいつもの圧のある笑顔でそう言われ、茶髪の生徒は少したじろぎながらもフン、と鼻を鳴らした。
「そう言えば寮長の所の1年、随分話題になってたよね?……へぇ、君が鷹宮くん?桐谷くんは学級委員会議で会ったよね。俺は浦西累、二年生。改めてよろしく」
浦西先輩が、そういって俺に手を差し出した。……あれ?思ったよりも嫌な人じゃないのかも……俺はそう思って握手を交わした。
「へ〜、本当に可愛い顔してるんだ。俺結構タイプかも。もう彼氏はいるの?」
浦西先輩はそういってニッコリと俺に微笑みかけた。恐ろしい言葉に「いません!」と反射的に返すとクスクスと笑ってくる。な、なんなんだこの人は!?
海斗先輩もチャラ男ってかんじがするけど、元気なコミュ力タイプなのに対して浦西先輩はアンニュイで色気のあるタイプだ。
「先輩っ、鷹宮って……」
風紀委員の人達の奥の方からそんな声が聞こえた。……俺?キョトンとして声のした方を見つめる。
「あ、せっかくだから紹介しとくよ。俺らんとこの一年で——」
浦西先輩が紹介し終わらないうちに、人をかき分けてその一年生がバッと俺の前に現れた。派手な金髪をウルフカットにしたそいつは、ピアスを何個も耳に着けて制服を気崩している。…オイオイ、ここの校則が緩いとはいえ風紀委員がこんなに気崩していていいのか?ってくらい。
「やっぱり……玲葉!!!!」
「……えっ?」
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