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覚悟
俺は高校の正門を前に、長く重いため息を付いた。
────学園白爾
今日からこの学園で、青春の1ページを過ごさなければならない俺だが、心底帰りたかった。なぜならここ…白爾は超名門の男子校だからだ。
先に言っておくが王道のパターンなんかじゃない。親に無理やり入学させられたとか、本当は貧乏なのに金持ち学校に入れられたとかそういった「ワケあり」なプロフィールは持ち合わせていない。
ただ、ただひたすら簡単な理由で、俺は第一志望校に落ちたのだ。で、ここ白爾が滑り止めだったのだ。
俺、鷹宮玲葉は自分で言うのもなんだが日本内でも有数の規模の財産を持っている一家の次男だ。
それならば第一志望校に金さえ払えばいくらでも裏口入学出来るだろうと思われるかもしれない。
だが、うちの父親は「自分のことは自分で責任を持て。そこに親は関係ない」というのが子育てのモットーであり、自分の勉強不足で高校に受からなかった息子を親の力で入学させようなんて気は毛頭ない。
そこについては俺は父親と同意見だし、そこらへんの金持ちの坊ちゃんみたいに甘やかされて育てられなくてよかったと思う。
父親の事は尊敬しているし家族仲も至って良好だ。両親は俺に対して過保護でも無関心でもなく、1人の息子として愛情を注ぎ時には厳しくしつけてくれた。
だがしかし。俺の、この俺の青春の1ページが、こんなむさくるしい男子校だなんて。
もっと死ぬ気で勉強に励むべきだったと何回も後悔してきた。
女がいないからこんなに嫌がっているという訳じゃない。男子校なんだ。男しかいないんだ。いつ俺が男に襲われるか分からないじゃないか。
またもや自分で言うのはちがうとおもうが、俺は中性的な外見をしている。そのせいで子供の頃は女とよく間違われ、プラス家柄も手伝って汚いおっさんに誘拐されそうになった事だって何回もある。
色素の薄い少し猫っ毛の黒髪に、ぱっちりとした二重、そして長いまつげ。おまけに色白で体格もいい方ではない。
明らかに男子校物のBLマンガの総受け主人公だ。王道中の王道だ。こんなの許されない。
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