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扉が閉まる音と共に、ドタドタと足音が鳴り響き次第に小さくなっていく。先程合ってしまった丸くなった目と、絵に描いたような驚きの声を思い出しながら隼斗はクスクスと笑い声を上げて色の頬を撫でた。大きな黒猫は不機嫌そうな声を上げながらその手にすり寄る。その愛らしさに隼斗はまた笑い声を上げた。
「見られたね。誰だったんだろう」
「客」
「色の? ふぅん」
隼斗の瞳の奥で僅かに炎が燃える。静かに色の身体に這う墨を指でなぞると隼斗は小さく首をかしげた。
「ねぇ、俺には彫ってくれないの? 俺も色の刺青のファンなんだけど」
「嫌だ」
色の鋭い一言に隼斗は何度も瞬きをする。今度はポカンとしたままの隼斗の身体を色の指がなぞった。
「隼斗の身体はこれですでに完成形――芸術品なんだから。俺が手を加える必要なんて無いよ」
恍惚の中で蕩ける色に、隼斗は照れくさそうに笑うとゆっくりと唇を重ね合わせた。
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