伯爵令嬢は物語を愛する ~ありふれた婚約破棄におけるひとつの結末~

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「テレサ、君との婚約を破棄する」  貴族の子どもたちが通う学園のホールに、第二王子・フリッツの声が響き渡った。  卒業を間近に控え、式典の予行演習が行われている。  多くの生徒が集まる衆人環視のもとで放たれた先にいるのは、勝気そうに翡翠の瞳を燃やす女生徒。  平等を謳う学園ではあるが、制服を彩る襟元のタイで爵位を示すことが慣例で、女生徒のそれは伯爵家。そうでなくとも彼女は知られる存在で、向かい合う第二王子の(かたわ)らに立つ女生徒と比較する声も多い。  驚きか、得心か。  王子と彼女、どちらに味方すべきか悩む生徒たち。  それこそが、テレサ・ドルステンが待っていたものだった。
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