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カリナを探した時と同じ様に下田で宿を取り次の日 石廊崎に向かった。
あの時と違い明るくてゆっくりと時間が流れている様な気がした。
カリナはこの場所の事は殆ど覚えていなかった。
「私たちここでぶら下がっていたの?
信じられない
アラタってほんと勇気あるんだね」
「あの時は無我夢中だったから恐怖なんて感じなかった
でも改めて見てみると無謀としか思えない
...あの出っ張った岩の所に引っ掛かったのかな」
そこに"ナニモノ"かの気配を感じた
辺りは少しずつ闇が滲み出し灰色の流雲と夕焼け雲がオレンジ色の幾何学的な模様を空に描いた。
僕はカリナの右手を握り締め大きく息を吸った。
「カリナ!
ありがとう
君が救ってくれたカリナをずっと大事にする
約束だ
君の事も本当に愛している」
握り締めたカリナの掌が揺れた。
「カリナ!
ごめんなさい
“僕”の事 お願いします
本当は寂しがり屋で悲しみの中にいたんだと思うの
あなたが癒して慰めてあげて」
僕たちはそれぞれの思いを潮風に乗せて鳥かごから飛び去った彼女にサヨナラを告げた。
いつの間にか黄色く色を変えた夕日は心残りでもあるかの様にいつまでも水平線に漂っていた。
おしまい
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