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僕は鳥かごを持ち彼女は後から付いて来た。 どうもしっくりしないポジションでぎこちない10分間を歩くといつも行く公園に着いた。 僕達は鳥かごを挟んでベンチに並んで座った。 曇り空から吹く風は湿気を帯びていて首元に絡みついた。 僕は彼女との向き合い方と距離のとり方をどうすべきか漠然と考えていた。 カリナは彼女の近くで止り木から鳥かごの柵を何度も往復して頭を傾けながらお喋りする様に歌った。 それに呼応する様に彼女は口唇をすぼめた。 「本当は猫を飼おうと思ってペットショップに通ったんです 商店街にある結構大きなお店です」 「ああ その店にはカリナを保護して直ぐに行きました 写真まで見せて種類を確認して貰いましたから」 「そうでしたか... いわゆるペットセラピーを前々から勧められていたんですがどうしてもその気になれなくて... でも猫だったら飼える気がしてお店に通うようになりました スコティッシュ何とかと言う猫の愛らしさが気に入りその子にしようかと悩んでいるうちにお店にいる高価な猫と野良猫の違いが分からなくなって考えがまとまらなくなりました ここのお店にいる子猫は会えるのに野良の子猫って何処に行けば会えるんでしょ? 野良の子猫に会って店の子猫の違いを知りたくなったのです そんな具合で一日中その事が頭から離れないんです セラピーのつもりが良くない精神状態になっていました そんな時でした ある日お店から出ようとすると何処からかわたしの名を呼ぶ声がしたんです」
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