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「わたしは呼ばれるままに店内に引き返し熱帯魚コーナーの隅に置かれた大きな鳥小屋の前で立ち止まりました 赤や黄や白の小鳥達が忙しそうに飛び回りみんな無秩序で自分勝手に歌を歌っているようでした その中でこの子だけがわたしの近くに来て ’カリナ カリナ’ って語りかけてくれました 今思えば馬鹿げていると思います そんな訳ないのに... でもあの時は間違いなくそう呼んでくれたのです わたしは小鳥の語りかけを聞いている内に胸のつかえがすっと取れて悩みや迷いが消えていました 気を良くしたわたしはその日の内にこの子を求め 初めてペットを飼う事になったんです わたしの名を呼んだのか、それともこの子の名を知らせたのか、分かりませんがカリナって名に決めるのに時間は掛かりませんでした それがちょうど1年ほど前になります それから不思議と調子も良くて病気が治ったんじゃないかって思うほど元気になり復学を考え始めた所で今回のような事になってしまったのです」 「僕が想像出来ないご苦労をされているとは思いますが... ご家族の手助けはどうなんでしょうか? カリナの面倒を見て頂く訳にはいかないんですか? その方がいつもカリナの側に居れると思うんですが...」 「家族... わたしが一番 落ち込む言葉です ...中学に入るとすぐに両親は離婚して兄は父親に、わたしは母親に引き取られ家族は離散しました わたしが発症するキッカケになったのは間違いないと思っています」
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