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「瀬野さん...
一体どうしたんです?
落ち着いて下さい」
僕はそう言いながら彼女の言葉を思い出していた。
”多重人格”
その言葉を頭の中で繰り返しながらどう対応していいのか分からず逃げ出したい気分だった。
公園はいつの間にか闇が押し寄せ所々に街灯が灯り始めていた。
「ウチが向き合う人はアンタだしアンタが向き合う人はウチなんだよ
カリナはウチだしアンタだよ...
カリナ...今日は帰るね
また会えるよ
じゃあね」
彼女は鳥かごに向かってそう言うとすっと立ち上がり頭を下げた。
その顔は無表情で見つめる先には僕もカリナもいなかった。
駅の方へ向かって歩く彼女の後ろ姿を見ながらこのままではダメだと思った。
それにこのまま彼女を一人で帰して良いものなのか...
複雑な事柄をより一層難しくしてしまういつもの自分の思考と穏やかな生活を壊されたくないと言う思いが僕自身を縛っていた。
僕は頭を抱え込んだまま立ち上がれなかった。
暫くして気が付くと足元には闇が流れ込み 点々と街灯の明かりが繋がった公園の道をジョギングや犬の散歩をする人達が行き交い 昼間とは違った場所にいるような気がした。
僕はカリナの事が気になったがどうにも気持ちの整理がつかず混乱してしまっていた。
鳥かごのカリナは止り木の上で静かに漂っていた。
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