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その後 瀬野からの連絡はなかったし僕もしなかった。
何故なら休日は雨が続きカリナとの散歩も行けていなかったし彼女と向き合う自信がなかった。
その日も雨が降り灰色の雲は僕の心にも重く伸し掛かっていた。
ベランダに鳥かごを下げ暫くの間カリナと雨音を聞いていた。
その内に僕は空腹を感じ冷蔵庫の食材を調べると殆ど無いのに気付いた。
外に出るのは億劫だったがこの先1週間分の食材は無くては困るのだ。
夜は残業で遅くなるので買い出しは難しいし明日の休日も雨が続く予報なので仕方なくスーパーへ出かける事にした。
買い出しが終わるとパンパンに膨れた大きめの布袋とリュックを背負い激しを増した雨に濡れながら坂道を急いだ。
雨降る中で運ぶ荷物はどうしてこんなにも重いのだろうかと思いながら歩いていると街灯の所に黄色い傘をさして佇む人がいた。
こんな所でこの豪雨の中 何をしているのだろうと思いつつ通り過ぎようとすると、
「沖さん!?
沖さんですか?」
僕はこんな所で名前を呼ばれる筈はないので人違いだろうと思いながら振り返ると瀬野が僕を見つめていた。
「やっぱり そうだ」
彼女は疲れた顔に無理やり笑顔を作った。
「ど...どうしたんですか?
こんな所で...」
ワンピースの彼女は少し小さめの傘のせいか肩先と足元はびしょ濡れで少し震えていた。
「ええ、カリナに会いたくて...
でも場所が分からなくなって...
カリナを置き去りにした所に行けば近づけるかもと思いずっと彷徨いました...
でもやっとこの場所に辿り着きました」
僕は彼女との関わり方をどうしようかと考えている時でもあったし鳥かごを返してしまえば解決すると分かってはいたが説明の付かない不安が募っていた。
それは今まで感じた事のない胸の苦しみを伴う不安。
僕は鳥かごのカリナを返す事の寂しさだと解釈していたが、本当はそうではなく目の前にいるカリナの事を思い不安な胸のつかえがあるのかも知れないとその時 感じた。
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