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この状況での彼女に対する選択肢のなかった僕は落ち着かないポジションで後からついて来る彼女を気にしながら早足で歩いた。
アパートに着くと彼女は玄関前に佇み小刻みに震えていた。
「どうしました?
そんなトコで...
どうぞお入り下さい」
全く女性の気持ちに寄り添えない僕は部屋の中から呼び掛けた。
「あのぉ...
ひと目で良いのでカリナに会わせてくれませんか?
そしたら帰ります」
「...そうですか?
上がって貰ってもいいのに...
...でもそうですよね」
僕は鳥かごを玄関に持って行くと彼女は座り込んでブルブルと震えが止まらないように見えた。寒い季節ではないが長雨の影響で気温は高くなかった。
僕はたまらず、
「だから遠慮しないで部屋で温まって下さい」
僕はそう言うと彼女の肩に軽く手を置いた。
「止めて下さい
大丈夫です
...わたし分かってるんです
沖さんに嫌われているって事
それに後悔しているんです
自分の病気を打ち明けた事も
とにかく全部です
カリナは引き取ります
ご迷惑をお掛けした上にわがままを言ってすみません
今までありがとうございました」
彼女はゆっくり立ち上がり青白い顔で深く頭を垂れた。
僕は予想もしていなかった彼女の言葉でポッカリと胸に穴があいた気がした。
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