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瀬野が帰る頃には雨も小降りになり その内に上がった。 濡れていた彼女のワンピースも乾き貸していた着替えはどうしても持ち帰って洗って返すと きかなかった。 そして彼女は鳥かごのカリナを連れて帰って行った。 次の日も予報通り雨で僕の気持ちも重く湿りがちだった。 カリナの歌声を聞きながら眠りにつき カリナの控え目なメロディーで目覚めた2ヶ月近く 僕の身体の至る所にカリナの歌声が染み込んでいて一生忘れる事が出来ないとさえ思った。 前にも思った事があった。 たかが一匹の小鳥の為に自分の生活を乱されるなんて思いもよらなかったと。 まさにカリナが去って2ヶ月間 魂を持って行かれた様な空虚な時を過ごした。 そんなある日 夢を見た。 カリナがベランダから必死に呼んでいる。 僕は窓を開けてカリナを迎えた。 「カリナ久しぶりだね 元気そうで良かった」 そう言うと、 「元気そうで良かった? わたしはガッカリしてるの あれ程 君に歌ってあげて、そして早く思い出せる様に呼び掛けていたのに... 君は一体 何してるの? いつまで真実に気付かず背を向け続けるの? 本当に臆病で弱虫なんだね」 そこで目が覚めた。 全く意味が分からなかったが 一つだけ言えるとすれば、瀬野さんに対する僕の気持ちをしっかりと見つめてちゃんと答えを出すべきだと言ってるのかもしれないと思った。 ただ忘れてしまった思い出は多い筈だしそれが何なのか分からなかった。 それから数日後 三谷さんから連絡があり至急 瀬野さんの事で会いたいとの事だった。 僕は何事かと思い次の日に仕事を早めに切り上げて店に直行した。
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