12

1/3
前へ
/69ページ
次へ

12

わたしの中には少なくとも性格の異なる3人がいる。 一人は行動的な”ウチ” もう一人は破壊的な”僕” そしてコミュ障で引き篭もりの”わたし”。 今まで悩みに悩んで来たけど誰だって程度の違いはあるものの いくつかの色を持った自分がいるんじゃないかと思っている。 きっとどれも自分なのだけれど普段の”わたし”は気弱で根暗でいつも自分を隠してしまう様な引っ込み思案だと思っている。 一番怖いのは”僕”が支配してしまうと今まで大変な事ばかりを起こして来た。 リストカットに電車への飛び込み。 そして...今回は 身投げ... まるで死神からの使者のように私の中で巣食っている”僕”。 リストカットは自分だけの消滅で終わるが、飛び込みは他人を巻き添えにしてしまう可能性があるし実際にそうなってしまった。 あの時... 我に返ったわたしをいつの間にか抱きかかえてくれていたあの人の息遣いと鼓動は今でも私の中で息づいているし何よりもあの人の顔をちゃんと覚えている。 でもあの時は怖くて恥ずかしくて具合が悪いふりをしてお礼さえしなかった。 だからあの人の死を聞いた時はショック過ぎて立ち直れなかった。 引き篭もってしまったわたしと違い活動的で猜疑心や疑心暗鬼の激しいウチは粘り強くその人を探し求めて鎌倉のミナト ソウイチさんである事を見つけ出してしまった。 今でもよく覚えている。 小雨で濡れた坂道を上ると線香の香りがお寺の駐車場に漂いミナト ソウイチさんの一周忌は多くの人々で溢れ 湿りがちな読経はいつまでも辺りを包んでいた。 わたしは学校をサボり制服姿のままで... しかも黒とグレーの風景の中で一際目立つ黄色い傘で周りの多くの視線を感じながら本堂の石段を上がった。 焼香をして本堂の写真を見ると、 “あの時の人だ” そう思いながら申し訳なくて涙が溢れるのを必死に(こら)えた。 でも不思議と写真の彼には何となく違和感を感じたのを覚えている。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加