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それを境にわたしの中のウチは、 “救ってくれたのはあの人じゃない” と言い掛かりをつけるようになりわたしを苦しめた。 それに “生きる資格なんてない、死んで詫びるしか無いんだ” と僕はいつも囁き わたしは心の制御が出来ずに寝込んでしまった。 でもお兄ちゃんの助けで何とか持ち堪える事が出来て暫くするとバイトも出来るくらいに回復した。 フランクで楽しいお店のオーナー夫妻に出会えて多くの事が出来るようになった頃、 鳥かごのカリナと出会い そして沖さんと出逢った。 沖さんと初めてあった日... ミナト ソウイチさんと瓜二つの沖さんに驚き、恐れそしてまともに顔を見る事さえ出来なかったわたしの背中を押してくれたのは”ウチ”だった。 引っ込み思案なわたしと大胆なウチは争うように自分の事を話し そして後悔し それでもわたしは彼にまた会いたいと心から願った。 こんな気持ちになったのは生まれて初めての事だった。 2回目の出会いで彼の手の温もりを感じた時にあの時の息遣いと鼓動が蘇った。 思わず“止めて”って声を荒げてしまう程 あの時のホームでの出来事がありありとリアルに溢れた。 わたしは確信し彼の側に居たいと望んだけれど”僕”がそれを(はば)んだ。 きっと”僕”は彼がいると望みが叶わないと感じたのだと思う。 情弱で自分の思いに正直になれないわたしはまた同じ過ちを冒そうとしていた。 ”僕”は鳥かごのカリナを半ば強引に彼から引き離し最後の準備を始めた。 最後の準備... ”僕”にとってカリナと言う鳥かごを消滅さない限りいつまでも檻の中に閉じ込められ解放される事はないとずっと前から思っていた。 だから今回こそは邪魔が入らず檻を消滅して自由に羽ばたけると確信していた。
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