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それからはずっと”僕”がカリナを支配していた。 今回こそは開放される自信があった。 万が一でも探されない様にキャンプ場のバンガローを借りて身を隠してその時を待った。 魂が行き来するこの岬の尖端から血のように美しく染まった空を羽ばたき開放されるその時を。 ただ一つだけ失敗したのは鎌倉の寺へ行った事だろう。 余計な事だったがあの時点ではたまに”ウチ”が現れたり”わたし”が現れたりしていた。 でも待ちに待った今日この時が来た。 薄っすらと闇が滲み始めた頃 小さな漁港を見渡せる細い坂道を登りきると血液を薄めたような夕日が水平線を染めていた。 ”これだ これを待っていた” ”僕”は感動し暫く見惚れてしまっていた。 どこからか風と波の音に紛れて”僕”を呼ぶ声が聞こえた時... ふと”わたし”が湧き出て来た... でも”僕”は直ぐに”わたし”を封印する事が出来た。 もう何も邪魔するものはなかった。 どれだけの時間を掛けてこの時を待った事か... ”僕”は目を見開いて血に染まったソラへ羽ばたいた。 ところが... 心地良く身体の重みを失くした瞬間 右腕の激痛で身体が引き戻された。 見上げると以前 見た事のある顔が”僕”の右手首を掴み何かを訴えていた。 ずっと前に見覚えのある顔... 右手首だけに委ねられた全身の重みでリストカットした傷跡から徐々に血液が滲み始め そこから黄色く変色した小鳥が飛び去った様に見えた。 その瞬間 ”僕”はいつの間にか血に染まったソラを潮風に翻弄されながらゆらゆらと羽ばたいていた。 そして心が開放され 全てが終わった様に感じた。
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