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カリナの冷たい眼差しと吐き捨てるように言った思いもよらない言葉。
"君は誰?"
"掴んだ手首を放せ?"
こんな時にカリナの多重人格だか人格障害だかが現れるなんて思ってもみなかったが もうそんな事はどうだってよかった。
僕は死んでも彼女を放さない勇気と体力だけを望み祈った。
無音だった世界に潮風の音や岩を砕く波の音が聞こえ始めた頃 カリナは意識を失ってしまったのか 頭も左腕もダラリと垂れ彼女の重さだけが増した。
どうにか両手でカリナの右手首を掴んだが引き上げる支えを無くしてしまい少しでもバランスを崩せばもう奈落へ落ちるしかない。
僕はこの歳まで “死” を考えた事は無かったし生きる意味すら深く考えた事もなかった。
ただ自分本位に生活し人に迷惑をかけなければそれで良いと思って生きて来た。
だから死に直面したこんな状況なんてバカげてるとつい最近の自分だったら思うだろう。
でも今は違う...
今にも零れ落ちそうなカリナの命を決して放さない...
自分がどんな事になろうと彼女を救いたい...
そんな思いで溢れていた。
いつからだろうか...
この激しい感情は...
この旅を始めた頃?
いや もっと前...
その時 カリナの か細い声が聞こえて来た。
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