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「沖さん ありがとう
わたし...
大好きな人にこうして救われて幸せ
でも絶対に貴方を傷付ける訳にはいかないの
だからお願い...
手を放して下さい」
「アンタはそれでいいの?
ウチをここで諦めるの?
何の為ここまで来てウチの手を掴んで放さないでいる
ウチはその理由を知っているしアンタもそれを分かっている
だからこうして繋がっていれるんだ」
「早く放してくれないか
さっきから何してる?
絶対に君はこの子を救えないのに...
君の命を投げ出すなんて無駄な事...
バカげてるって分かってるだろう
何が君をそうさせるんだ?」
さっきから下半身の感覚が麻痺している。
カリナの右手首を掴んだ両手の握力も限界だったし 何より頭に血が上り意識がボンヤリとしていた。
幻聴だろうか...
色んなカリナの囁きが僕の頭を巡りこだました。
「何が僕をそうさせるんだって?
決まっている...
カリナを愛してしまっているからさ」
僕はハッキリとその問いに答えた。
すると...
カリナの右手首から黄色い煙が湧き出るとそれが小鳥となりオレンジ色の夕日の中へ飛び去って行くのを見た。
もう幻覚が見えるようになってしまったと思いながら僕は何度となくカリナの名を呼んだ。
でも もう囁く様な声しか出ない。
そして...
ふわっと身体が軽くなった。
再び心地良くスローな時間が訪れた。
すると幾つもの画像が頭の中で現れては消えをくり返し 幼い頃の忘れてしまった記憶が映し出された。
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