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「あぁ 本当なんだ...
死に際に今迄の人生の記憶を全部吐き出して真っ白な魂に還るって...」
そんな事を思いながら映画でも観る様に落ち着いた気分で流れる画像を凝視した。
すると、
お下げ髪の制服を着た女子高生が現れた。
よく見るとまだ幼さが残るカリナだった。
彼女は憂鬱そうな顔で僕の横を通り過ぎて行った。
僕は何気に振り返ると彼女は徐々に早足になりあっち側へ飛び出そうとしていた。
その時 右側から猛スピードで近づいて来る電車が見えた。
僕は思わず走り寄り彼女を抱きしめこっち側へ引き戻した。
「あっ!」
その瞬間 僕の身体は痛みが支配していた。
おまけに潮の香りが鼻を突き 気持ち悪くなるくらい波音が頭の中で反響して今にも破裂しそうだった。
死の世界ってこんなにも苦しいのか...
そう思っていると僕は何かを握り締めている事に気が付いた。
しかし何なのかも分からず何が起こっているのかさえ分からなかった。
僕は身動きが出来ず痛みだけを感じながら何度も うわ言を繰り返した。
それも何を言っているのか分からないまま波音にかき消された。
そのうちにどこから何かを叫ぶ声が微かに聞こえたような気がした。
僕は痛みを我慢しながら冷静にその声に集中した。
「おーい
そこに誰かいるのか!
おーい!」
僕はその時
”自分は生きているのか?”
そう思った。
それに握り締めているのはカリナだと思い出したがピクリとも動かない彼女がどう言う状態なのか確かめる術はなかった。
そして少しずつ痛みが薄れ意識も遠のいていった。
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