11人が本棚に入れています
本棚に追加
14
「アラタ!
アラタ!」
遠くから僕の名を呼ぶ声がこだました。
ピンボケした画像の向こうから誰かが僕を見ている。
そしていつの間にか消えて行く。
そんな事が何度も繰り返された気がする。
そして
「沖さん!?
分かりますか?
沖さん!」
眩しい光の中で話し掛ける人が看護師だと分かるのにどれ程の時間が過ぎたのだろう。
「ここは...
病院ですか?
一体何があったんですか?」
「気づかれましたね
良かったです
痛い所がありますか?」
「いえ どこも痛くないです」
「何があったか覚えてませんか?」
「ええ...
何も覚えてません」
「ご自分のお名前はどうですか?」
「沖 アラタ」
「年齢は?」
「20歳」
「そうですか...
もうすぐ先生がいらっしゃいますので...」
看護師は硬い表情のままいなくなった。
目覚めた僕はどうやら記憶を失くしてしまっていた。
覚えてるのは両親の顔だけだったし どうして病院に居るのかさえ分からず寝て起きてを無限のループの様に繰り返した気がした。
そして時間の感覚もないまま知り合いだと名乗る夫婦が見舞いに来た。
もちろん誰だか分からなかったし妙に明るくひさしげに話す雰囲気に馴染めなかった。
最初のコメントを投稿しよう!