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その日は朝から憂うつだった。
昨日あると思っていた瀬野からの連絡はなく待たされるのが大の苦手でもあるし、おまけに休日は出来るだけスマホを遠ざけた生活をしている自分にとってスマホを持ち歩るかねばならない事にイライラしていたからだ。
カリナと散歩に行くのも億劫だったが休日の日課をサボるのも気が引けて鳥かごとスマホを持って散歩に出かけた。
その日 土手から見た夕陽は空と川を深いオレンジ色に染め黒と灰色に棚引く雲はまるで絵画の様に幻想的だった。
オレンジ色に照らされて違った小鳥に見えるカリナは口笛みたいな音色を奏でて僕は特別な時間の中にいるような心地良さに包まれていた。
すると突然 着信音が鳴った。
「あの、すみません...
わたし...瀬野と言います」
僕はなぜだか瀬野は男性だとばかり思い込んでいたので女性の声に焦り言葉に詰まってしまった。
「あのお、聞こえますか?」
「・・・・」
「もしもし わたし瀬野と言います
小鳥の...カリナの事で電話しました」
するとカリナの歌声は更に澄んだ音色でメロディーを夕陽に奏でた。
「あっ! カリナ...
そこにいるんですね
カリナ...よかった生きててくれて
...すみません、失礼しました
あなたのお名前を聞いていなかったもので...」
「ぼ...僕の名前なんてどうでもいいんですが、昨日も今日も 一日中 スマホを持ち歩いていました
直ぐに連絡があると思っていたので...
僕にしてみればかなりストレスなんです
あっ、それは貴方には関係の無い話ですよね
あの...
率直にお訊ねしますが、瀬野さんは後悔しているんですか?
この子を棄てた事を...
それにどう言う事情で棄てたんでしょう?
それに...これからどうされますか?
僕にはそれくらい確認する権利はあると思うんですが」
僕は矢継ぎ早に唐突で愚直すぎる質問を焦ったついでに投げかけてしまった。
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