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その時のカリナは笑顔に満ちていた。 そうだ 僕が好きだったあの笑顔... そして彼女を包んだ海水が物凄い勢いで僕の方へ流れ込んで来た。 僕はたじろぎながらも身も心も軽くなるのを感じた。 気付くとカリナの右手を握り締めていた。 彼女の濡れた髪からポトリ... ポトリと僕の頬に海水が落ちた。 僕は夢か現か分からないまま目の前のカリナを引き寄せ口唇を合わせた。 彼女は優しく微笑み僕を抱きしめた。 「ねぇカリナ 僕達って一体どうしちゃったんだろう? 上手く思い出せないんだ」 僕は微笑む彼女に尋ねた。 「ウチもよく分からない でも怒らないで聞いてね... 確かなのはウチがアラタを殺した... だからウチは罰を受けて涙の深海で漂っているの」 「君が僕を殺した? それはあり得ないよ 少なくともカリナは僕を必要としてくれていたし 僕だってそれ以上にカリナの事を必要としている」 僕がそう言うと彼女は次第に海の中へ沈み始めた。 必死に彼女の手を掴もうとしても僕の掌をすり抜けてゆらゆらと沈んで行った。 「あっ」 目覚めた僕は病室の狭い視野の中にいた。 「カリナ... カリナ! どこだ!」 僕はありったけの叫び声を張り上げたつもりだったが虚しい吐息でしかなかった。
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