11人が本棚に入れています
本棚に追加
一日の区別が付き始めたある日、カリナが側で見つめていた。
「ああ、カリナ久しぶりだね
どうしてた?
怪我は大丈夫?
ギプスも取れたんだね
よかった
髪も随分 長くなったね
それも似合ってる
僕は見ての通り元気だとは言えないけどカリナに会うと心が踊るよ
それに...」
「沖さん」
カリナは はしゃぎ過ぎる僕を制した。
「わたし...
死のうとしたの
だけど...」
「カリナ...
僕は知ってるし 分かってるからそれはもういいよ
もういいんだ」
「分かってない
全然わかってないし いい筈がない
貴方がわたしの命を3回 救った事
覚えてないでしょ?
ほら...
その顔...
分かってない
わたしが高校生の時の記憶しかないでしょう
でも本当は貴方は覚えてるはず
ただその事に目を背けてわたしを守ろうとしているだけなの
最初は衝動的に抱き止めて救ってくれたのかも知れないけど、
あの岬の先端で決してわたしを諦めなかった貴方は覚えている筈なの
そしてこの病院で目覚めたわたしは貴方の姿を見て死のうとした...
貴方がくれたこの命を...
バカなわたしはまた投げ出そうとした
あの日...
病院の屋上の夜空は雲が低く垂れ込めて今にも泣き出しそうだった
わたしは高く囲まれた屋上のフェンスのある所が破れているのを見つけた
その時のわたしは充分過ぎる程わたしで まともだった
右手と左足が使えなくても這いつくばってフェンスの向こう側へ行った
1m位の壁を覗き込むと車のライトが光の帯のように流れていて綺麗だった
そして左手を壁につけて右足で跨ごうとした時に、
“カリナ
何してるんだ”
貴方の声が聞こえたの」
最初のコメントを投稿しよう!