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「貴方が直ぐそこにいるような幻聴だった 意識が戻らずベッドの上で石のように眠っている人が来れる訳ないから... でも貴方はわたしに語り続けたの “カリナ... 君は生きるんだ どうしたってそうしなければならないんだ なぜなら僕をこのままにして逝けるはずがない だから僕のために生きてくれないか 僕が蘇生する為には君が必要なんだ いや、君にしか出来ないと思っている 今の君は死よりも僕の為に生きるべきだ 僕を蘇らせる為に生きるんだ” 貴方は確かにそう言ったの わたしは壁をまたいだ右足を元に戻すとそのまま倒れ込んでしまった。 淀んだ空からポトリ ポトリと雨粒が落ち始めるとわたしも涙が止めどもなく溢れて風景が滲んだ すると貴方の存在を身近に感じたの “あの人を残して逝っちゃいけない” わたしは何度もそう呟きながら貴方の待つ病室へ急いだ そして貴方の無表情な顔を覗き込み声を上げて泣いた 冷たく細った手を握り締めて... “ごめんなさい 許して” 何度も繰り返した わたしは "死ぬこと以外は何でもするから いつもこの人の側にいさせて" そう祈ったの すると貴方は目覚めた どれ程 わたしを遠い目で見ても、忘れてしまっていても、怒ってもわたしは嬉しかった」 僕は彼女の話を聞きながら嬉しさが込み上げて幸せだったが、彼女をこのまま僕の為に縛り付けちゃいけないと思った。
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