最終話

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「以前も話したけど... わたしは右腕を骨折して左足の骨にヒビが入った たったそれだけ... アラタがクッションになってくれたから... あなたが諦めなかったから... わたしはたったそれだけしか罰を受けなかった 全部わたしの責任なのに...」 「カリナ... 僕は一つも後悔はないし手を放さないのはあの時だけじゃなくて これからもそうしたいと思っている でもね...カリナ 僕はカリナの人生を幸せにしてあげれないと思うんだ 僕はこの事を言いたいと思っていたんだ 君はもう充分過ぎる程 僕に尽くしてくれた 僕への謝罪の人生なんてダメだよ きっと僕は復活するつもりでいるけど何時になるか分からない 1年後かも知れないし30年後かも知れない だから...」 「だから何? わたしはアラタを見捨ててこれから生きて行けって言うの 30年後... "カリナ...僕だよ 良くなったよ" ってわたしの前に現れてわたしが幸せな筈がないのはアラタが一番分かってるでしょ? あなたがわたしの手を放さなかった様にわたしも死んでも放さない それにずっと離れない だからその話はもう終わり 二度とそんな事 言っちゃだめなんだよ それに話してなかったけど大学辞めました アラタのお母さんにもこれから彼の面倒は全部看るって言ってあるから心配しないでね アラタの会社にもまだ席を置いてもらっているからわたしが貴方の手になってキーボード叩くよ」 カリナはいつからこんな強引で強い人になったんだろうと思った。 誰もいない病室で泣き暮れて絶望した日。 頭だけの日常の中で歩き回っていたあの頃の記憶が残酷に蘇る日々。 舌を噛み切ろうとして痛みに負けてしまう情弱な自分。 でもカリナの話を聞いて “何かに僕たちは守られていた” と思った。 人すらも上手く信じられなかった自分が“ナニモノ”かに救われ守られている。 僕が信じてやまなかったキーボードを叩いて羅列される文字と数字、それこそが自分を見出す全てであり他の事は人生の付属でしかなかった。 でもそうじゃない“ナニモノ”かの存在を無性に知りたかった。
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