怒らない女

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 今は八月だ。室内はエアコンが効いていて涼しいが外はとても暑い。今日は土曜日で亘が遊びに来ている。また昼間からワインだ。 「希里子、チーズを餃子の皮で包んで揚げてくれ。あ、それが終わったら親父を散歩に連れだしてくれ。俺達が飲んでるのを見たら親父だって飲み始めるだろう」 「はい。つまみはチーズだけでいいの?」 「そうだな、野菜スティックも貰おうか。亘、なにか食べたいものはあるか?お昼にビーフシチューが作ってあるらしいけど」 「それだけあれば十分だ。こいつの親父を頼む」  紀里子は頷いてカウンターで仕切られているキッチンへ立った。亘が耳打ちをする。 「相変わらず怒らないのか?」 「ああ、何を言っても怒らない」   慎吾は笑った。この分だと浮気も大丈夫だろう。
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