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暫くして料理が出来た。希里子がトレーに乗せて運んできた。
「今が十時だから二時間したら戻って来い」
「はい」
そう言ったとき母の呼ぶ声が聞こえた。慎吾は父と母の寝室へ行く。父が大量の血を吐いていた。
「親父! 今、救急車を呼ぶからな」
慎吾はスマホで119番した。母がぽつりと呟いた。
「保険の受取人、私とお父さんのぶんを希里子さんに変更しておいて良かった。あの子はよくやってくれてるもの」
慎吾は驚いて母の両肩を持った。
「なに言ってるんだ。普通は血の繋がった息子だろう」
そう言ったとき希里子が部屋に入って来て初めて怒った。
「今はお父さんの容態を心配して!」
母が「そうね。その通り」と言っている。慎吾はこの家で自分だけが浮いている気がした。
終わり
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