怒らない女

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 今日、亘を呼んだのは慎吾の実家の母が病気になったことの相談だ。母は五十三歳。以前から血圧や中性脂肪が高かったのだが、脳梗塞をおこしてしまった。慎吾は大学時代から都内に住んでいて大企業のシステムエンジニアになった今は中央線沿いの駅で悠々自適に暮らしている。母のことは父に任せてもいいのだが、妹の話だと父はアルコール依存症のがあるらしい。  慎吾はチーズを皿に乗せるとリビングのテーブルに置いた。 「それで運転してくれる彼女はどうしてるんだ?」 「車で待ってるってさ。ま、お前に紹介できるほどいい女じゃないしな。エンジンかけてエアコンをつけておけば熱中症にはならないだろう」  そうは言っても亘は三時間くらいは居るだろう。彼女はその間ずっと車で何をしているのか。 「俺、母の話を聞かれてもいいんだぞ。呼んで来いよ」 「本人が待ってるって言ってるからいいんだよ。さ、乾杯しないか?」  慎吾は二つのワイングラスにロゼを満たした。亘と乾杯をする。
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