怒らない女

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 インターホンが鳴った。慎吾(しんご)は壁に掛かった時計を見る。午前十一時、大学のときの友達である(わたる)が来る時間だ。慎吾は玄関に行ってドアを開けた。亘はポロシャツにチノパンで片手にワインを持っていた。 「昼間だけど休日だからいいだろう。運転はしないしさ」 「電車で来たのか?」 「いや、車だ。彼女に運転させる」  亘はそう言って玄関をあがった。慎吾はリビングへ案内する。リビングにはグレーの三人掛けのソファーがある。本当はL字型のソファーが欲しかったのだが、一人暮らしの慎吾には持て余す。亘が座ったので慎吾はカウンターで区切られているキッチンへ行った。ワイングラスを二つ持って来る。 「冷蔵庫にチーズがあったはずだ。それでいいか?」 「ああ、時間が時間だから出前でもいいと思ってたんだ。昼飯(ひるめし)は食うだろ」  慎吾は頷いた。
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