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「列車は走り続ける限り無限に電力を発電し、その電力で列車は動き続ける。つまり列車は止まることが許されない」
氷河期、地殻変動、パンデミック、最終戦争、考えられる災害がいっぺんに来て地球は死の星となった。生き残るために、人類は団結し都市を内包した超巨大な無限軌道列車を作り出した。人類最後の居住地、『ノアの箱舟号』を。
走行する限り電力を発電し、発電された電力で走り続ける『ノアズ・アーク』はつまり停車することが許されない。常に動き続ければならない。
「俺たちの仕事は、列車が動き続けれるように整備することだ。俺たちの仕事次第で、列車の未来、家族の命が懸かってることを忘れるなよ」
タカハシら電気設備整備隊のリーダーが演説を続ける。車輌外に繋がるエレベーターの中、防寒具を装備したタカハシたちはリーダーの演説に傾注する。
「外は地獄。いつ出れるかも分かりやしない。俺たちの息子娘が安心して生きれるかも定かじゃねえ」
列車の中に人類が籠もり始めてタカハシたちで7世代目。未だに外は人類が生活するには過酷すぎる。
列車の中も、格差社会によって補給物資が満足に行き通らない下層に追いやられたタカハシたち下層階級は明日を生き残れるか定かではない。上の上層階級に家畜と蔑まれ差別されるのは当たり前。命の価値が軽いからと、だから車輌整備などという危険な仕事を押し付けられる。
「――俺たちは家畜じゃない。クズどもの為に働いてたまるか。俺たちは、俺たちの家族のために生きる為に、命を懸けようぜ。誇りのためにな」
上層階級のクズの為じゃなく、自分たちが胸を張れるように命を懸けよう。
だからタカハシも命を懸けて、車輌を整備する。
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