もしも憂が妊娠したら……2

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『ゔっ!!ぅおぇえええッッ……ッ』 妊娠生活は壮絶なものだった いわゆる悪阻と言う現象 折角朔夜が俺の為に作ってくれた料理も、食べてる最中で気分が悪くなって全部吐いてしまう 『はぁっはぁっはぁっ……ゲホッごめん……っ』 「気にしないで」 トイレで朔夜に背中をさすって貰う日々 子供の為に栄養のある物を沢山食べなきゃいけないのに俺の身体は痩せて行く一方だ 段々と膨らんでいくお腹を除いて…… 『はぁ……』 寝室まで朔夜に運んで貰い直ぐに横になった 正直言って本当にツラい 一体いつまでこんなのに耐えなきゃいけないんだ 「水は飲める?」 『……無理』 「そっか。じゃあここに置いておくね」 『ん』 俺の様子を気にしながら朔夜が寝室から出て行った その気遣いがとても助かる こう言う状態になったら出来るだけ一人になりたいから けど妊婦って本当に凄いと改めて思った 全員って訳じゃないだろうけど女性はこんな大変な思いをして子供を産んでるんだ マジ頭が上がらない 今までは漫画やテレビでしか見た事なかったけど、自分が経験してみて初めて悪阻ってやつの苦しみが本当に分かった けれど明日は健診の日 どれだけツラくても、行かなきゃいけないんだ…… 「大丈夫?」 『うん。今は落ち着いてる』 健診の時はいつも付き添ってくれる 助手席のドアも開けてくれるし朔夜は本当に優しい 男性専用の産科がある数少ない病院 これからどんどん色んな地域の大きな病院でも男性専用の産科を取り入れて行く動きがあるみたいだけど、既に取り入れている病院がたまたま近所にあって本当に良かった 子供は俺のお腹の中で順調に育っていた だけど俺自身の健康状態を見て今日は点滴をして帰る事になった 勿論点滴中も朔夜と一緒 「あれ?尾澤?」 「朔夜?」 『え?』 点滴を終え待合室へ戻ると何とここで尾澤会長と遭遇した 「ちょっと待って下さい。ここに居ると言う事はもしかして」 「うん。子供出来た」 朔夜がそう言うと尾澤会長の表情が物凄く明るくなった 「おめでとう御座います!」 『あの、会長もここに居るって事は……』 「ええ、私も妊婦です。まだ初期の段階なのですが」 『ええっ!』 2000万人に1人と言う本当に低い確率なのにこんな身近に俺と同じ男で妊娠した人が居るなんて! き、奇跡過ぎる…… 「憂、座って」 『あ、ああ。うん』 会長の隣に腰を下ろしふぅっと一息ついた 「大丈夫ですか?顔色が優れませんよ」 『実は悪阻が酷くて……今点滴して貰ったばかりなんです』 「そうですか。それはお辛いですね」 『会長は悪阻は?』 「私は今の所特には。ですがお腹が空くと少し気持ち悪くなります。きっと食べ悪阻なんでしょうね」 『食べ悪阻?』 「何か口にしてないと逆に気持ち悪くなる悪阻だよ。憂とは真逆だね」 「体重増加に気を付けましょうと先生から忠告されています」 『へぇ……』 成る程、本当俺と真逆だ ってか会長が妊婦って………… 『あの、相手は……』 「勿論勝哉さんですよ」 勝哉さんがパパ…… ダメだ想像出来ねえ!! 「あーあ、尾澤も遂にあのクソに孕まされたか」 『言い方!』 「はは……」 苦笑いする会長 「まさか自分が妊娠するなんて驚きましたよね。けれど好きな人の子が自分のお腹に宿ってくれたなんて本当に神様からの贈り物ですよ。男性も妊娠するだなんてこの歴史上生物学的に絶対有り得ませんでしたから」 そう言って凄く優しい顔で自分のお腹をさする会長 「お互い元気いっぱいな子を産みましょうね」 『……はいっ』 その時、会長の名前が呼ばれた 「では呼ばれたので行って来ます。また連絡しますね」 「うん。尾澤も頑張ってね」 「憂君も頑張って下さいね」 『ありがとうございます』 こうして会長は診察室へと入って行った 「憂、大丈夫?」 『うん』 朔夜の肩にもたれ掛かり頬を擦り寄せた 『…………』 まさか会長も妊娠していたなんて本当に超驚いたけど、身近に同じ男の妊婦がいたって事にほんの少しだけ安心した それともう一つ…… やはり会長は受けだったんだな きっと続くw .
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